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新しい時代の図書館研究会研究交流会 開催報告集

「新しい時代の図書館研究会」について
近年、公共図書館や大学図書館、美術館・博物館など公共文化施設は、所蔵アーカイブのデジタル化やインターネットを活用したサービスを提供するようになってきています。特に「Web2.0」に代表される多角的なインターネット利用の時代を迎え、さらに高度な閲覧環境が一般の利用者を迎え入れることができるようになってきています。「新しい時代の図書館研究会」は、このような動向をとらえ、諸機関で先端的な試行や活動を行っている方々にお声がけをして、お互いの交流を通じて情報交換や研究をしていきたいと考えています。本研究会ではご賛同いただいた各図書館、諸機関を巡回会場にお願いして、見学などをかねて数ヶ月ごとに開催していきたいと考えております。

開催報告…新しい時代の図書館研究会第5回研究交流会…武蔵野美術大学美術館・図書館

12月11日(土)に開催した新しい時代の図書館研究会第5回研究交流会の開催報告です。

開催日:2010年12月11日(土)
会場:武蔵野美術大学美術館・図書館
時間:研究会15:00~17:00、懇親会17:00?
参加費:無料(懇親会:1000円)
対象:図書館・博物館・美術館関係者、図書館建築関係者など
内容:
武蔵野美術大学美術館・図書館の図書館新棟の見学と、同図書館が目指している方向性について

プログラム:
15:00~15:10 挨拶&趣旨説明
15:10~16:00 会場館からの事例報告
16:00~17:00 施設見学
17:00~17:30 質疑応答&ディスカッション
17:30~ 懇親会

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12月11日(土)、第5回研究交流会を武蔵野美術大学美術館・図書館にて開催いたしました。
前回(第4回目)は、独自のユニークな企画で注目を集めている奈良県立図書情報館にお邪魔しました。約1年ぶりの開催となった今回は、今春オープンした武蔵野美術大学の図書館新棟を見学。40名を越える方々にお集まりいただきました。

■まず、本会の発起人である鈴木明(神戸芸術工科大学)より「新しい時代の図書館研究会」についての趣旨説明(註1)がなされ、その後、会場館である武蔵野美術大学美術館・図書館の本庄美千代さまより「美術大学図書館におけるICT活用事例紹介」という題で、同大の新棟建築にかかわる経緯および取り組みをご紹介いただきました。以下はその内容です。

2004年に新棟の建築が決まって以降、ポンピドゥーセンター公共情報図書館、カンディンスキー図書館、フランス国立図書館ほか国内外20館ほどの機関を見学し、参考にすべき点を把握した。武蔵野美術大学もポンピドゥー同様、美術館機能と図書館機能の融合が特色である。

新棟竣工と同時に、館の名称も変更され、美術資料図書館から美術館・図書館へと変更された。以前の名称は図書館のイメージが先行してしまうので、美術館を打ち出したいという意図である。合わせて、ロゴマークも新たに制作。デザインは佐藤卓デザイン事務所が担当。

建築のコンセプトとして藤本壮介氏から提案されたのは「書物の森」であった。天井まで書架で埋め尽くされ、それが渦巻き状に配置されているのが特徴。それによって、どこにもない図書館が出来上がった。現在、多くの見学者を迎えている。極めて特徴的な建築のため、図書館の根幹である配架計画をどうするかが課題とあった。特に高い書架によって視認性が確保できないため、向こう側には何があるのかをきちんとナビゲートすることができる館内サインが必要であった。この課題についても、佐藤卓デザイン事務所との協働によって、独自の館内サインを実現できた。なお、館内には美術作品名作椅子14脚を配置。

新棟の建設に際して、学習図書館機能と研究図書館機能をしっかりと区別して、サービスを提供したいと思った。

学習図書館機能としては、旧棟においては電気容量の制限もあって実現できなかったICT活用に取り組んだ。雑誌を除く全蔵書にICタグを導入、さらに関連書籍や関連イベントの検索が可能な「ブックタッチ」システムの開発によって付加価値を持ったICT環境を実現した。これらは初年次教育で効果を発揮するはずである。ただし、ブックタッチの開発はレファレンスの省力化が目的ではなく、ライブラリアンにはデジタルでできること以上の質の高いレファレンス・サービスが求められているということである。
なお、ブックタッチでは検索履歴の印刷も可能。

ポスターコレクションや貴重書・美術作品の表示が可能なインフォメーションボードシステム、および約350脚を所蔵している近代椅子のコレクションを形や色で分類・検索ができる仕組みも整えた。さらに、3万5千点の所蔵ポスターのうち、約2万点を新棟に移しICタグを実装。デジタル化によってこれまで検索できなかったポスター資料も検索可能となった。
これらは、美術大学ならではの検索システムである。

以上のような学習空間の整備の一方で、研究の場の創出も不可欠であった。
1F部分は造形研究センターと位置づけられており、貴重書と準貴重書のためのスペースとなっている。展覧会図録を集めた「カタログギャラリー」、絵本を集めた「絵本ギャラリー」
、本についての本を集めた「ブックギャラリー」が設けられている。教員および大学院生用の研究個室と研究スペースも配置され、図録や貴重書を用いた講義、研究に利用されている。研究スペースは教員にも大変人気であり、常に予約で埋まっている状態である。
研究スペースはガラス張りで外から見られるようになっており、貴重書室も一部中が見られるような作りにした。

これからの課題は、美術館資料・博物館資料・図書館資料・映像資料を組み合わせたアート・アーカイブの構築である。時代遅れにならないように、運営の仕組みに拡張性を保たせなければいけない。現在のICTはまだスタートでしかない。(註2)

■非常に丁寧な説明をうかがった後、いよいよ皆さんお待ちかねの施設見学へ。人数が多いので2つのグループに分かれての見学となりました。

エントランス入って正面から。
床のサイン。場所と蔵書量が一目瞭然。
「ブックタッチ」について解説中。
書棚の解説を聞く参加者たち。
地下の開架書庫。
上から撮るスキャナ。本を傷めないように。
十進分類を示す大型のサイン。
絵本ギャラリー。絵本は準貴重書扱い。
ブックギャラリー。本の本を集める。
大学院生用の研究個室。
深澤直人氏と開発したインテリジェント・カート。
入口付近の雑誌コーナー。天井に紫外線除けのシートがみえる。
展示コーナー。高精細画像もタッチパネルでみることができる。
天井まで書架が伸びる。

■施設見学の後は、質疑応答へ。図書館運営に関するもの、建築に関するもの、様々な質問が寄せられました。

図書館運営に関するもの:
○飲食については認めているのか?どの時期や時間に利用者が多いのか?
飲み物のみ認めている。テスト前や授業終了後が多い。
○図書館における環境への配慮はどうなっているか?
特に明文化されているものはないが、今後課題になってくると思う。
○学生は書籍をスキャンできるということであるが、著作権についてはどうなっているのか?
著作権についての教育は初めに学生にきちんと伝えているが、管理することは難しい。
○図録の書誌情報はどこから取得するのか?美大間での役割分担などはあるのか?
国立情報学研究所(NII)やOnline Computer Library Center(OCLC)からデータを取得できるが、アジア圏の書誌などは自前で登録している。
○美術館と図書館の一体運用とのことであるが、美術館と図書館どちらの資料にも成りうる資料の管理はどうなっているのか?
紙についての資料は図書館で扱っている。
○電子書籍についての対応は?それによって新しい空間が生まれるのか?
今のところの優先順位は低いが、『博物図譜』のように武蔵野美術大学特有の資料はデジタルアーカイブとして公開している(註1)。電子書籍が今後増えていくのかどうか、まだ曖昧であるので電子書籍に対応する空間を作ることも今のところ考えていない。
○アート・アーカイブを作る上で二次情報をどう作っているのか?
メタデータの方法論を、現代検討中である。
○展覧会資料等について目録を作成している機関があるのか?
NIIから書誌データを取得できる。ただし小規模美術館やギャラリーで刊行されている図録等はデータがないので自前での作業になる。

建築に関するもの:
○大きな窓が設けられているが、光の問題はどうなっているのか?
光の問題については認識している。天井にはポリカーボネートを置き、屋上の紫外線防止フィルムを貼っている。ただし長期間でみると本の焼け等が生じるかもしれない。
○新棟はかなりの面積を使っていて周辺の建物との距離も非常に近いが、大学で議論にならなかったのか?
新棟の場所はもともと裏庭のような場所。制作者にとって「土」はとても重要なので随分と議論があった。図書館としても階数が多いのは管理・費用の問題から好ましくはなかったので、高層とせず地上2層としている。
○保存環境についてどのように考えているか?
1Fは、貴重書・準貴重書を置いているので部分的ではあるが24時間空調としている。現在改修中の美術館では二系統の空調設備を念頭に置いている。

■図書館新棟から場所を移して、懇親会へ。武蔵野美術大学美術館・図書館のスタッフにもご参加いただき、質疑応答の時間に質問しきれなかったことなど、率直な意見交換がなされていたようです。末筆になりましたが、開催にご尽力下さいました武蔵野美術大学美術館・図書館の皆様、ご参加下さった方々に改めてお礼申し上げます。(文責:久慈達也)

註:
1)研究会の趣旨については下記リンクを参照のこと。
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/10
2)以上の話題については『丸善ライブラリーニュース』第12号(通号163号)でも紹介されているのでご一読いただきたい。
3)武蔵野美術大学では、荒俣宏氏旧蔵コレクションを中心とした18世紀以降の博物図譜資料のデジタルアーカイブ化を実施。その成果は同大の展覧会にて公開された。
http://mauml.musabi.ac.jp/

関連記事:
○新しい時代の図書館研究会第5回研究交流会…武蔵野美術大学美術館・図書館
http://infolib.kobe-du.ac.jp/2010/11/13/42899/
○新しい時代の図書館研究会第4回研究交流会…奈良県立図書情報館
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/34317
○開催報告…新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/19862
○新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会…せんだいメディアテーク
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/16493
○開催報告…新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/7232
○新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会…多摩美術大学図書館
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/4495
○新しい時代の図書館研究会…第1回研究交流会を開催
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/33
○新しい時代の図書館研究会について
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/10

開催報告…新しい時代の図書館研究会第4回研究交流会

12月12日(土)に開催した新しい時代の図書館研究会第4回研究交流会の報告です。

概要:
■図書館の「使い方」を考える。Vol.2
奈良の歴史や文化を軸にした多彩なギャラリー企画、
ユニークな地域連携の取り組みによって、注目を集める
奈良県立図書情報館の事例を基に、
これからの図書館の「使い方」を考えます。
※プログラムの一環として「施設見学」を行います。
※終了後、懇親会を予定しています。

日時:2009年12月12日(土)14:00~17:00
会場:奈良県立図書情報館
http://www.library.pref.nara.jp/guide/access.html
プログラム:
14:00~14:10 挨拶&趣旨説明
14:10~15:00 施設見学
15:00~15:10 休憩
15:10~15:40 会場館からの事例報告
15:40~16:40 ディスカッション
16:40~17:00 まとめ
17:30?懇親会(※別会場を予定)

○奈良県立図書情報館
http://www.library.pref.nara.jp/index.html

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 12月12日(土)、第4回研究交流会を奈良県立図書情報館にて開催いたしました。
 前回(第3回目)は、「メディアテーク(メディアの箱)」という新しい概念の基に設立された公共文化複合施設であるせんだいメディアテークにお邪魔して、2008年度の改修を機に誕生した「カフェ」を中心にお話をうかがいましたが、今回、会場館をお願いした奈良県立図書情報館も独自のユニークな企画で注目を集めている施設です。「カレントアウェアネス・ポータル」でも奈良県立図書情報館の活動を伝える記事がいくつか載せられていますので、そちらでもご確認下さい。
http://current.ndl.go.jp/node/11792
http://current.ndl.go.jp/node/9447
http://current.ndl.go.jp/node/15247

○まず、副館長の尾登さまよりご挨拶を頂戴し、続いて、この会の発起人である鈴木明(神戸芸術工科大学教授)より「新しい時代の図書館研究会」についての趣旨説明がなされました。趣旨説明の後は、参加者同士の自己紹介を行い、施設見学ツアーへ出発。
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まずは「自動化書庫」を見学。物流倉庫等で使われるシステムが応用されていて合理的である反面、図書館員が本を手に取る機会が少なくなる、という一面もあるとのこと。

 続いて「オーサリングルーム」と「アトリエ」という「創る」ための設備を見学。イベントのポスターや居酒屋のメニューを作りにくる、印刷しにくる方々で、稼働率も高いそうです。この見学中にもお客様がお見えになり、持ち込みの印刷用紙を大判プリンターにセッティングして作業を始めていました。なお、オーサリングルームの隣はコピー室になっており、インターネットからのプリントアウトも可能となっています。
〈見学の様子〉
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〈ギャラリー部分〉
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〈2F展示コーナー〉
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ギャラリーとホールでは、翌日のシンポジウム「邪馬台国と纒向遺跡をめぐって」の会場が設営されていました。ホールには入りきらない人数の応募があったため、急遽ギャラリーでの中継も行うことになったそうです。

○休憩をはさみ、企画・広報担当の乾さんによる事例報告へ。「文化発信メディアとしての図書館ー図書館の新たな可能性を探る」という題でご発表いただきました。
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 まとめると次のような話題であったといえます。

まず、図書館を始めとした公共施設は「ニーズに対応」することを目指してきたが、「ニーズを創り出す」ことで交流の主体になることができるのではないか。そのために図書館が持っている資料や施設設備、情報を編集し直していく必要がある。図書情報館では、図書情報館で情報を編集し、創造し、発信し、新しい人を巻き込んでいく場所になることを目指している。
 そのための取り組みとして、いくつかの事例が紹介があった。一つ目は、地元奈良で制作するデザイナーによるファッションショー「Tribute to 光明ファッションショー」。光明皇后をテーマした衣服を地元奈良在住のデザイナーが制作、ショーに華を添える飲食物も地元のレストランがオリジナルメニューを提供した。二つ目は、図書館全館を舞台に展開された「劇的☆めくるめく図書館?ならノれきしデたわむれロ」。1300年の歴史をお芝居で表現するという企画であり、一般に公募したキャストとともに奈良出身の演出家が作り上げた。その他、「奈良」をコンセプトにしたギャラリー企画、民間企業の展示会など幅広い活動が紹介された。
 図書館との連携も強めている。秋田県立図書館、福井県立図書館、せんだいメディアテークとは観光ポスターや郷土資料の交換展示や関連書籍の展示を行っている。インターンシップの受け入れという形で官学交流も行っており、企画展示や運営補助のほか学生による独自企画も実施。
 モノとヒト、ハコを様々な形で再編集していくことで、新たな可能性のある施設になれるのではないか。

○事例報告の後は質疑応答とディスカッション。「利用者の方が施設を使って作ったチラシ等を館が集めることは考えてはいないのか」など、図書情報館にとっての提案となるような話題も。
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○懇親会は、図書情報館から場所を移して、近鉄新大宮駅近くの「ミラノ食堂」さんへ。この「ミラノ食堂」は、奈良県立図書情報館が館内でファッションショーを企画した際に料理を供した図書情報館とも縁があるイタリアンレストラン。美味しい食事とお酒に皆さん満足されたことと思います。末筆になりましたが、開催にご協力下さいました奈良県立図書情報館の方々、ご参加下さった方々に改めてお礼申し上げます。(文責:久慈達也)

関連記事:
○新しい時代の図書館研究会第4回研究交流会…奈良県立図書情報館
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/34317

○開催報告…新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/19862

○新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会…せんだいメディアテーク
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/16493

○開催報告…新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/7232

○新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会…多摩美術大学図書館
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/4495

○新しい時代の図書館研究会…第1回研究交流会を開催
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/33

○新しい時代の図書館研究会について
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/10

開催報告…新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会

新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会の開催報告です。
※今回は第4回ARGカフェとの共催でした。

題目:「せんだいメディアテーク、現在/未来」
日時:2009年6月20日(金)13:00?16:00
場所:せんだいメディアテーク7階スタジオb
懇親会:18:00?19:30(懇親会費2000円)
会場:せんだいメディアテーク1階クレプスキュール・カフェ

「せんだいメディアテーク」は2008年3月に施設の一部改修を行い、7階部分に新たな機能が誕生した。改修時の議論、それを受けて実現した「goban tube cafe」の事例を中心に、今後のメディアテークの展望を観る。

プログラム:
12:30? 受付開始
13:00~13:10 開会挨拶
13:10~13:50 施設見学
13:50~14:00 休憩
14:00~14:40 会場館からの事例報告
「せんだいメディアテーク、これまでとこれから」
         (せんだいメディアテーク副館長:佐藤泰氏)
         「goban tube cafe」
         (カフェ研メンバー:渡邉武海氏)
14:40~15:40 ディスカッション
15:40~16:00 まとめ
16:00~16:30 休憩
16:30~18:00 第4回ARGカフェ
※ARGカフェの詳細については下記リンクよりご確認ください。
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090503/1241360451
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 6月20日、第3回研究交流会を仙台にて開催いたしました。
 神戸芸術工科大学で開催した第1回研究交流会のテーマはウェブ。ウェブを使った図書館の情報発信でした。続く第2回は伊東豊雄設計の建築が話題の多摩美術大学図書館が会場だったので、実際の「場」とそこに生まれる「使い方」に焦点を当てました。

 第3回目となる今回は、「メディアテーク(メディアの箱)」という新しい概念の基に設立された公共文化複合施設であるせんだいメディアテークが会場。設立準備段階からの約10年間、せんだいメディアテークは扱うべきメディア環境の激変と共に歩んできたといっても過言ではないでしょう。2008年に小規模ながら7階部分の改修を行い、コミュニケーションの手段としての「カフェ」も誕生しました。そこで今回は、改修時に議論された点やカフェ設立の経緯、今後の展望をせんだいメディアテークのスタッフよりご報告いただき、議論の土台にしたいという狙いがありました。言ってみれば、今回も「場」をどう使うか、ということがテーマであったといえます。

○人数は少なめでしたが、仙台、南東北の図書館関係者にお集まりいただきました。参加して下さった方にはsmtが今春刊行した機関誌『ミルフイユ』をプレゼント。
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※『ミルフイユ』についてはこちらをご参照下さい。
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/10873

○まず、この会の発起人である鈴木明(神戸芸術工科大学教授)より「新しい時代の図書館研究会」についての趣旨説明に続き、今回会場館をお引き受けいただいた、せんだいメディアテーク(以下、smt)の佐藤泰副館長よりご挨拶を頂戴いたしました。

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○趣旨説明の後は施設見学へ。今回の研究会開催に際し大変お世話になったsmtの齋藤さんに案内していただきました。smtを特徴付けるといっても過言ではないチューブの中を下りながら、各階の構成と見所を見学。

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○チューブの中を移動しながら、各階の様子を眺める。

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○チューブ内の展示。チューブ及びスラブにテキストが。
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○休憩時間には、smtのご厚意によりエスプレッソを堪能。
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○休憩を挟み、会場館からの事例報告へ。まずsmtの佐藤さんから「せんだいメディアテーク、これまでとこれから」という題で、開館までの道のりとその過程で出来上がってきたメディアテークの使命について報告があり、続いて渡邉武海さん(カフェ研メンバー、東北工業大学講師)がカフェの当事者として2008年の改修で誕生したgoban tube cafeのコンセプトおよび取り組みについて話して下さいました。

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○事例報告の後、そのままディスカッションへ。人数が少なかったこともあり、フロアと発表者を分けずに車座式で行いました。全体的に議論というよりは各参加者からの質問にsmt側が答えるという雰囲気のままの進行でしたが、それはそれで各参加者にとって有意義なことだったのではないかと思います。私、久慈が「最先端のサービスを提供するための意見や批評の収集はどうなっているのか?」という質問で口火を切らせてもらいましたが、指定管理者の問題や先端的なイベントを運営するための方法など運営面での方策や苦労話など、普段、図書館の方があまり関わる機会がないところでの興味関心が質問の内容だったように感じます。

振り返ってみてやはり気になるのは、メディアテークという名称の施設における図書館の立ち位置、あるいは仙台市民図書館としてはギャラリー、スタジオ運営を担う企画セクションをどう捉えているのか、という点です。実際今回の研究会およびその後の第4回ARGカフェをみても、階下にある図書館からの出席は(正式には)ありませんでした。逆に全くの図書館関連のイベントが「仙台市民図書館」で開催されたとしたら、企画セクションの方々は参加されたのでしょうか。せんだいメディアテークと呼称される一施設内での企画セクションと図書館の微妙な関係性が今後どうなっていくのか、さらには図書館とギャラリーそれぞれの枠組みでの評価を超え、「メディアテーク」という新しいコンセプトのもと設置された一施設として総体での評価をどうつけるのか。メディアテーク以後同種の文化複合施設が一定数設立され、運営を継続している今だからこそ、注目すべき問題ではないでしょうか。

 開館から約10年。ウェブ環境が想像以上の発展をとげ、「メディアテーク」というコンセプトを実現するためのインフラは10年前に比べて格段に整備されているといえます。そして博物館・美術館、図書館、そしてアーカイブスの協働、いわゆるMLAの連携が盛んに言われている現状にあって、M(ただしギャラリー機能ですが)とLそして活動記録のためのスタジオ(アーカイブ作成と発信のための機能)が一つ所に存在する「メディアテーク」という空間のポテンシャルはなかなかのものと思います。今後せんだいメディアテークが「メディアテーク」として魅力あるものになるためには、お定まりの結論ではありますが「コンテンツ」や「人」といったソフトの部分にかかっていると実感しました。この点は「新しい時代の図書館」を考える上で重視しなければいけないと感じます。

 懇親会は、第4回ARGカフェとの共同開催でしたが、東北の皆さんはお酒がお強いのか、一次会、二次会とも予想を上回る参加率。最終的には朝までコースの方もいたようで。恐れ入りました。末筆になりましたが、開催にご協力下さいましたせんだいメディアテークの方々、goban tube cafe当事者としてご報告下さった渡邉さん、そして、遠方にも関わらずご参加下さった方々に改めてお礼申し上げます。(文責:久慈達也)

◎第3回研究交流会にご参加いただいた方がブログ等にコメントを掲載して下さっております。
○telescoweb| 新しい時代の図書館研究会(第3回)@smtに行って来た(6/20/2009)
http://event.telescoweb.com/node/9829

○Traveling LIBRALIAN | ARGカフェ&新しい図書館研究交流会@仙台
http://d.hatena.ne.jp/yashimaru/20090622

○レファ協ほめまくり|新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会&第4回ARGカフェに参加したよ
http://d.hatena.ne.jp/nachume/20090621

○図書館退屈男|新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会&第4回ARGカフェ&ARGフェスト
http://toshokan.weblogs.jp/blog/2009/06/34argarg-5684.html

共催のARGカフェについて
○第4回ARGカフェ&ARGフェスト@仙台?感想と反響(1)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090629/1246283127

関連記事:
○新しい時代の図書館研究会第3回研究交流会…せんだいメディアテーク
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/16493

○新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会…多摩美術大学図書館
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/4495

○新しい時代の図書館研究会について
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/10

○新しい時代の図書館研究会…第1回研究交流会を開催
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/33

開催報告…新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会

新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会の開催報告です。

題目:「図書館の「使い方」を考える。」
日時:2月28日(金)14:00~17:00
場所:多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)アーケードギャラリー
懇親会:17:00~20:00(懇親会費1000円)

人と情報の接し方が大きく変わり、
図書館設計にも新たな考えが導入されている。
そこにもたらされた人と「本」との新たな関係は、
図書館の新しい「使い方」を誘発する。
新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会では
多摩美術大学図書館の事例から、
大学図書館の未来系を考える。

プログラム:
14:00~14:05…開会挨拶:秦剛平(多摩美術大学図書館長)
14:05~14:20…趣旨説明:鈴木明(神戸芸術工科大学新図書館構想ワーキング代表)
14:20~15:20…施設見学:
庵原義隆(伊東豊雄建築設計事務所)
中山英之(中山英之建築設計事務所)
森由幾子(多摩美術大学図書館)
15:20~15:40…事例報告:渡邉朋也(多摩美術大学図書館)
15:40~16:40…ディスカッション
16:40~17:00…まとめ
17:00~…懇親会

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第2回目となる研究交流会を開催いたしました。
第1回研究交流会がwebをテーマに図書館の情報発信を取り上げたのに対し、今回は実際の「場」とそこに生まれる「使い方」に焦点を当てました。新図書館の建物にスポットが当たることが多い多摩美術大学図書館が会場に決まっていたので、そこでの「使い方」をケース・スタディとして掘り下げることができれば「新しい時代の図書館」の在り方、課題について参加者と共に考えることができると考え、「図書館の「使い方」を考える」というテーマを設定しました。事前の情報が少なかったにもかかわらず、図書館員だけでなく、大学教員、文化施設、建築関係の方、学生、多彩な顔ぶれ約30人の方にご参集いただきました。

○多摩美術大学図書館長・秦先生による開会の挨拶。秦先生は聖書研究の権威。
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○開会挨拶を頂戴した後、神戸芸術工科大学新図書館構想ワーキング代表である鈴木明より「新しい時代の図書館研究会」についての趣旨説明が行われた。「研究成果を自分たちで抱え込まずにオープンな形で共有する」という研究会設立にいたる考え方を伝える。
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○多摩美術大学図書館の特徴の一つである「アーケードギャラリー」が会場。傾斜がある床の上で独特の椅子に腰掛けての研究交流会となりました。
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○趣旨説明の後は、皆様お待ちかねの施設見学へ。施設見学を担当して下さったのは、伊東豊雄建築設計事務所で実設計を担当された中山英之さん、庵原義隆さん、そして実際に業務で施設を日々使用している森由幾子さんの3人です。中山さん、庵原さんの登場は当日まで秘密でしたが、多摩美術大学図書館で通常業務以外の様々な活動を担当されている渡邉朋也さんがセッティングして下さいました。(写真は「マグテーブル」部分で「インフォシェルフ」の説明を受けているところ。)
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○各機能についてじっくりと説明を受ける参加者たち。中山さんが丁寧に設計の背景を説明して下さったことによって「なぜそういう形をしているのか~」「どうしてここに置かれているのか~」等、目の前に見える光景一つ一つに皆さん得心がいった様子でした。質問も適宜受け付け。
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○多摩美の方も中山さんの解説で施設を巡るのは初めてだったとのこと。研究会としても嬉しい誤算でした。
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○ティーブレイクをはさんで、多摩美図書館の渡邉さんからディスカッションのための問題提起として、「つくる図書館をつくる以降」という題目で事例報告をしていただきました。今座っているアーケードギャラリーおよび先ほど施設見学で説明を受けたラボラトリーの「使い方」を中心に、今後この図書館がどういう方向に舵を切れば面白くなりそうか、という話題を提供してくれました。大きなポイントは、多様な人の往来によって公権の及ばぬところしての「アジール(聖域)」となること。ここでいう「聖域」は森や教会、港町等が果たしてきたという。渡邉さんは図書館で開催したいくつかの事例を挙げた後、少しずつではあるが大学の中でその役割に近づいているのではないか、と締めくくった。
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○話題提供をいただいた後、ディスカッションへと以降。比較的穏やかな立ち上げりでしたが、他の参加者もブログに書いているように、スルガ銀行D-laboをデザインした李明喜さんの「あえて」の質問によって一気にヒートアップ。「多摩美の図書館、すばらしいぞ」では終わらせない「議論」へと進展していきます。振り返ってみると、全体を通して争点となったのは人と情報の関わり方、そのための空間がどのようにあるべきか、ということだったように思います。チラシに「本」(本のみならず情報全般を意図)とカッコ付きで記したように、情報の受け取り方、関わり方が多様化している現在、それに対応する空間とそこで生じる「使い方」にまで踏み込めればと思っていた事務局側としてはニヤリの展開でした。李さんは新しい情報との関わり方の一例として学生の携帯電話の利用形態を挙げ、図書館もそういう点を考慮に入れないとまずいのではないか~」と問いかけた。それに誘発されるように、今まさに新図書館プロジェクトが進行中の武蔵野美術大学美術資料図書館の本庄さんから「メディアとして図書館をきちんと捉えなければならない」や前回の交流会で講師を努めて下さったARGの岡本さん「ウェブをきっかけにしたリアルのつながりが重要」といったコメントが生成されました。また多摩美の渡邉さんからは「あえて」態度を留保してもいいのでは、との応答も。時間が押していたこともあり、まとめへと移らざるを得ませんでしたが、各自心のどこかに留め置いていただいて、次回の研究交流会の際、議論を深めていただければと思います。
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終了間際に、次回はせんだいメディアテークでの開催が内定(5月頃)。今回の多摩美術大学図書館のコンセプトメイキングにもせんだいメディアテークの存在が深く関わっているだけに、今回と併せて考えると刺激的になりそうです。せんだいメディアテークは開館から約10年を迎え、2008年春に改修を終えたばかり。開館以降、ウェブ環境の変化とともに歩んできた「メディアテーク」と向き合うことは「新しい時代の図書館」を考える上で重要なことと感じます。

懇親会では準備不足により、多摩美スタッフさん、参加者のみなさんにお手数をおかけすることになりました。末筆になりましたが、開催にご協力下さいました多摩美術大学図書館の方々、ゲストとして丁寧に解説して下さった中山さん、庵原さん、ご参加下さいました方々に改めてお礼申し上げます。(文責:久慈達也)

◎第2回研究交流会に参加して下さった方々がブログ等にコメントを掲載して下さっております。
○telescoweb event | 報告…新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会
http://event.telescoweb.com/node/9282

○Traveling LIBRALIAN | 図書館という<場>
http://d.hatena.ne.jp/yashimaru/20090302

○かたつむりは電子図書館の夢をみるか | いっそ住みたいと思うような多摩美大図書館で新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会に参加してきた
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20090301/1235936436

○matt | atlas | 新しい時代の図書館
http://www.mattoct.jp/blog/2009/03/post_417.html

○ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) – ブログ版 | 新しい時代の図書館研究会 第2回研究交流会「図書館の「使い方」を考える。」に参加(1)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090317/1237221377
○ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) – ブログ版|新しい時代の図書館研究会 第2回研究交流会「図書館の「使い方」を考える。」に参加(2)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090322/1237692877

関連記事:
○新しい時代の図書館研究会第2回研究交流会…多摩美術大学図書館
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/4495

○新しい時代の図書館研究会について
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/10

○新しい時代の図書館研究会…第1回研究交流会を開催
http://shintoshokanlab.kobe-du.ac.jp/node/33

新しい時代の図書館研究会…第1回研究交流会を開催

第1回研究交流会「Web2.0時代の図書館の情報発信」
日時:11月12日(水)14:00?17:30
場所:神戸芸術工科大学クリエイティブセンター2Fプレゼンテーションルーム
施設見学会:13:00?(図書館、ギャラリー)
懇親会:17:30?

講演:
大学の環境・資産を活かすために…ウェブ隆盛期における図書館の歩む道
講師:岡本真(ACADEMIC RESOURCE GUIDE編集長)
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/

「ウェブで情報発信」の意義…カレントアウェアネス・ポータルの舞台裏から
講師:村上浩介(国立国会図書館関西館図書館協力課調査情報係係長)
http://current.ndl.go.jp/

「WEB2.0時代の図書館の情報発信」というテーマにあわせ、講師の岡本さん、村上さんからは上記の演題をいただき、第1回目の研究交流会の開催となりました。神戸近郊の大学図書館さんの他、東京、名古屋、金沢からなどからもご参加いただきました。今回、最も遠方からの参加となったのは「せんだいメディアテーク」さん。結局、学内学外合わせて約40名程度の交流会となりました。岡本さん、村上さんの素晴らしい講演と参加してくださった皆様のあつい質疑応答のおかげで、理想的な形で研究会をスタートすることができたものと思います。

研究会終了後、講師の先生が講演資料及びご感想をウェブサイトにアップしてくれていますのでぜひご覧ください。

■ カレントアウェアネス・ポータル
http://current.ndl.go.jp/node/9351
■ ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ブログ版)
http://d.hatena.ne.jp/arg/20081114